FRPとは

FRP成形品製作工程

ここではご参考として、ハンドレイアップエ法による一般的な型の製作からFRP成形製品製作までの方法をご紹介します。

(1)製作図面

要件・要求定義を満たすデザイン画を作成し、これを基に図面を作成します。

(2)原型製作

  1. 樹脂の縮みや反りを計算し、木材・発泡ウレタン・油粘土・石膏・発泡スチロールなどを鋸、ナイフ等で削り出して原型を作成します。
  2. 原型の表面処理を行い型とFRPのくっつきを防止します。一般的な方法としては、初めにFRP用パテ等を使用して型表面の微細な穴を埋めて滑らかにします。次に硬化剤 を適量混ぜたFRP用樹脂(発泡スチロールはFRP用樹脂に溶ける為、発泡スチロール用樹脂を使用)を含ませたローラー、刷毛等を使い、型表面に樹脂を塗布します(樹脂には必ず硬化剤を混ぜて使用する。硬化剤には硬化スピード別に種類があり、季節、塗布スピード等の条件に応じて使い分ける。尚、充分な硬化を促す為、促進剤を使用する場合もある)。樹脂が硬化したらペーパーの60~240番で研磨し、更にその上に樹脂、またはサーフェーサー(型や製品表面の平滑性を出す為、樹脂を含ませたローラー等でサーフェスマットに樹脂を浸透させ、脱泡しながら積層〈必要な場合、脱泡ローラーを使用する〉)を塗布します。樹脂が硬化したら今度はペーパーの240~600番で製品と同等の表面に仕上げます。 最後にコンパウンドを用いて表面にツヤが出るまで磨きます。

(3)マスター型製作

  1. マスター型の離型処理を行い型とFRPのくっつきを防止します。初めに離型剤を塗布し、乾いたら拭きあげます。この作業を5~10回繰り返し、マスター型表面の微細な隙間を埋めてワックスを型に馴染ませます(離型剤には製造工程、製品等により様々なタイプがありますが、新しい型の場合には皮膜タイプ、離型作業を既に2~3回以上行った型の場合にはコーティングタイプがお勧め)。
  2. ゲルコートを塗りこみ、マスター型の表面硬度を上げつつ表面気泡を抑止します。塗布は硬化剤を適量混ぜたゲルコートを含ませたローラー等を使い、膜厚にムラ、厚み斑、立ち面に垂れなどが出ないように均一に行います(ゲルコートは必ず硬化剤を混ぜて使用する)。
  3. FRP積層を行います。ゲルコートが充分に硬化した後、初めに必要であればサーフェーサーを塗布します。次にガラスマット積層(樹脂を含ませたローラー等でガラスマット、ローピングクロス等ガラス繊維に樹脂を浸透させ、気泡を除去しながら積層)を製品の要求される厚み、強度にマッチするまで、樹脂が硬化する前に次々と重ねていきます(樹脂量は通常ガラス繊維量の2倍が目安。樹脂過多は重くなり強度も落ちるが、樹脂を絞りガラス含有量を上げれば軽くて強靭になる)。
  4. 原型からマスター型を脱型します。原型に貼り付けていったFRPが充分に硬化した後、FRPに傷がつかないようにゴムハンマー、皮スキ等を使って周囲を軽くたたき、徐々に離型していきます(離型し難い時には、ゴム、木襖を周囲に打ち込んだり、空気を注入する)。
  5. 型のトリミングを行います。脱型後、成形時に出来た不要な部分をグラインダー等で切落し、穴加工が必要であればドリル等で穴あけし、部品取付や補強取付が必要であれば取付作業を行います。この際、加工箇所は必ずサンダー、ペーパー、鑪、リューター等でサンディングし、切□を整えた後で二次接着をします。
  6. 型の仕上げを行います。初めにFRP表面に気泡等による穴が出来ていたり形状が出来ていない部分にパテ等を使用して修正していきます。次に塗装表面を細かい紙やすりで磨いて塗装面の食いつきを良くした後、アセトン、シンナー等で塗装面を拭き、残っている離型剤を取り除きます(FRP表面には離型剤が残っているので塗装ののりが悪い)。最後に塗装の仕上げをしで"バフ掛け"をします。

(4)生産型製作

生産型とは、マスター型のバックアップ、または大量生産時生産性を上げる為に型の複製を行う等の目的で作成されるものです。作成方法は基本的にはマスター型と同様です。

(5)製品成形

基本的な作成方法はマスター型とほぼ同様ですが、製品には脱型前に成形面の美観や着色のためトップコート樹脂を塗布することが多いです。要求される製品の厚み、強度、外観等仕様に応じてガラス繊維、樹脂、サーフェーサー、ゲルコート等々諸々の資材の選定(積層時の厚み、耐久温度、耐久PH値等により様々な種類がある)、積層数、補強の有無、組み合せ付帯部品の選定等構成が肝となります。

以上、ハンドレイアップエ法による一般的なFRP成形製品製作までの手順を簡単にご紹介しました。上記の通り、この工法によるFRP成形は小物であれば特に大掛かりな設備、機材も必要なく、比較的簡単に行えます。
しかし、成形作業には多くの知識と経験が必要とされ、その技術レベルによっては同―仕様製品であってもまったく性質の異なる製品が出来上がってしまいますので、 構造的、用途的に危険度の高い製品の自作は行わないで下さい。